人口流出の進む加西市。ここは地域教育「最後の砦」。【兵庫県立北条高等学校】

こんばんは。
播磨の魅力を発信するメディア「palette」のライター、ロペスです。

以前、県農(兵庫県立農業高等学校)で「県農みらいフェスタ」のインタビューをさせていただいてから、加古川市内外の学校園からキャリア関係のお仕事を受ける機会が増えてきました。

県農みらいフェスタの取材レポート。

これまで知らなかった各学校・園での魅力的な取り組みを目にする機会が増え、「学校って今はこんなに進んでいるんだ!」と日々新しい発見、学びがあり、地域の教育の可能性にわくわくしています。

今回の記事も教育関係から頂いたお仕事。加古川市のお隣、加西市にある兵庫県立北条高等学校で行われたキャリアガイダンス。そこにゲストとして呼んでいただきました。

お話をくれたのは加西市で働く宇高 秀和(うたか ひでかず)くん。

兵庫 播磨 加西市 ローカルメディア 北条高校 教育 学校 キャリア


「母校である北条高校に、卒業生としてできることをしたいんです」

そう語る彼の中のアツい想いに触れ、「よし、じゃあ俺も一肌脱ごう!」と奮起。ゲストとして関わるだけでなく、ライターとして記事も書かせていただくことになりました。宇高くんに限らず、当日のキャリアガイダンスに集まったゲストの中には北条高校の卒業生がちらほら。みんな口を揃えて同じことを言いました。

「年は離れていても、後輩である生徒たちの力になりたい。」

OB・OGたちが卒業しても関わりたいと強く思う北条高校。一体どのような学校なのか。彼らの想いはいったいどこから生まれてくるのか。

加古川ライター、ロペスのイベントレポート。今回は地域教育最後の砦、加西市にある北条高校でのキャリアガイダンスについてです。

兵庫県立北条高等学校

兵庫県加西市。私達が住む加古川市のお隣で、人口は43,438人(2018年4月時点)。少子高齢化に加え、人口流出が進み、2000年ごろから人口は50,000人を割っています。その後も微減を続け、「消滅可能性自治体」として名前が上がっている地域でもあります。今回の舞台は、そんな加西市にある兵庫県立北条高等学校。

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(写真提供:兵庫県立北条高等学校)

平成28年に「人間創造コース」が新設。

Fun to learn.(楽しく勉強する)
Fun to do. (楽しんでやってみる)
Fun to get.(楽しみながら力をつける)


といった学びのスタイルにもとづいてカリキュラムが組まれ、日々の授業が行われています。

また北条高校は「ひょうご学力向上サポート事業」の指定校として、学習者が能動的に学べる環境をつくる「アクティブ・ラーニング」型の授業に力を入れており、地域の他の教育機関から熱い注目を浴びている高校でもあります。

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生徒同士が協働で学ぶ『学び合い』を取り入れた授業。(写真提供:兵庫県立北条高等学校)

さらに地域密着型の高校として、地域活動への参加、インターンシップ、今回のような卒業生を含めた地域に縁ある大人を招いたキャリアガイダンスなど、「開かれた学校」として学校と地域が一丸となって生徒の教育に取り組んでいるのも特徴です。

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子育てセンターとの交流。(写真提供:兵庫県立北条高等学校)
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保育実習の様子。(写真提供:兵庫県立北条高等学校)

・公式HP
兵庫県立北条高等学校
・Facebookページ
北条高校人間創造コース
北高 Power Up 隊

「仕事」って何だろう?

キャリアガイダンスの当日。会場にゲストの方々が集まり、それぞれ自己紹介を行った後、ガイダンスの流れを確認。顔見知りが多かったためか、その後ゲスト同士で談笑する場面も多く見られました。

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自己紹介の様子。
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それぞれバックグラウンドが異なるゲストたち。歓談も盛り上がっていました。

その後、人間創造コースの生徒たちを迎え、ゲストと生徒の緊張をとくため、「似顔絵Remix」が行われました。限られた時間内で描くという制約があったためか、自然と相手の特徴的な部分に集中。私の場合は眉毛とひげが特徴的だったようで、その部分だけクオリティが高かったです。

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隣同士で確認し合う場面も。
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目の前の人の顔を描くため、自然とアイコンタクトが生まれる。
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制限時間があるため必死に描く。

ワークショップを終え、生徒3〜4人ゲスト2人のグループに分かれていよいよキャリアガイダンスがスタート。前のスライドにトークテーマが提示され、手元の紙に自分の考えを書いて共有するといった形で進められました。

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与えられたトークテーマについて、自身の中で考えをまとめる。
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トークテーマについて語り合うゲストと生徒
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グループのファシリテーター役。生徒たちが話しやすい雰囲気をつくります。

トークテーマは比較的簡単なものから始まり、徐々に深いトークテーマへと発展。そして、いよいよ今回のキャリアガイダンスの肝であるテーマ「あなたにとって働くって何ですか?」へ。生徒たちはもちろん、ゲストによっても「働く」ことの捉え方は様々で、私自身新しい見方、考え方に触れることができ、とても勉強になりました。

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キャリアガイダンスのメインテーマ「働くとは何か?」
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「働く」について、講師の捉え方も様々

中でも一番心に響いたのが、「働くとは、社会に魔法をかけること」という捉え方。一人の女子生徒が教えてくれた新しい視点で、「なんて綺麗な表現をする子なんだろう」と胸を打たれました。しゃんと背筋を伸ばしてまっすぐ前を向いて放った

「働くって、社会に魔法をかけることだと私は思うんです」

という一言。
あの時の彼女の凛とした声、澄んだ目が忘れられません。大人の前でひるむことなく、堂々と。かといってカッコいいことを言おうと背伸びをした様子もない。

君はその言葉を、その温度で言えるのか。
背筋がしびれ、自分自身の仕事、働き方を試されているような気がしました。

「俺の仕事は、地域や社会に魔法をかけている」

いつかそう胸を張って言える日が来るよう、これからも目の前の仕事に一生懸命取り組もうと、頑張るエネルギーをいただきました。ありがとう。

最後のトークテーマを話し終えた後、グループごとに気付き、学び、感想を共有。生徒もゲストも、素敵な時間を過ごせたことに感謝しながらキャリアガイダンスは終了しました。

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グループ毎に今回の気付き、感想を共有。
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ゲストたちの記念写真。

「仕掛人」インタビュー

今回行われたキャリアガイダンスの「仕掛人」は、北条高校人間創造コースのコース委員長で一期生の担任でもある衣川 顕子(きぬがわ あきこ)先生。

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少子高齢化、人口流出の進む兵庫県加西市。地域教育の「最後の砦」である北条高校で、「守り」に入るのではなく果敢に「攻め」の姿勢で教育に取り組んできた先生です。インタビューでは、キャリアガイダンスの背景にある学校、先生の想いについて伺いました。

ロペス:本日はご多用の中お時間をいただき、本当にありがとうございます。早速ですが、今回のキャリアガイダンスについて、背景や想いを色々伺えたらと思います。

衣川先生:こちらこそ、ありがとうございます。よろしくお願いします。

ロペス:最初に、キャリアガイダンスを始めた経緯について教えてください。

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衣川先生:この企画を行おうと思ったのは北条高校の卒業生である宇高くんから提案をいただいたのがきっかけです。私自身、日々の教育活動の中で「主体的な学び」が出来る子どもを育てるにはどうしたら良いかについて頭を悩ませていました。そして机に向かって物事を覚えたり考えたりするのもいいけれど、たくさんの人と関わってそこから何かを学ぶという形が、今の時代すごく貴重だろうという考えに行き着いたんです。
宇高くん自身もこういった取り組みに興味を持っていて、やってみる土俵が欲しいと話していたこともあり、「じゃあウチでやってみてよ!」という流れで実施に至りました。

ロペス:人と人との出会いから生まれる学び、ですか。お互いのやりたいことがうまくマッチしたと。ちなみに宇高くんと衣川先生はどうやって出会われたんですか?

衣川先生:彼は在学中、私の同僚が担任した生徒だったんです。職員室での会話の中で話題にあがるくらい好青年であったため、人柄については疑う余地はありませんでした。彼のように地域にUターンで戻ってきた若者を支援したかったのと、生徒にも学校以外の人から学べる機会を与えたかったという想いもあり、一緒に行うことになりました。

ロペス:なるほど……ということは、間接的ではあれど元教え子なんですね。実際、キャリガイダンスを行ってみて、先生の印象はどうでしたか?

衣川先生:やって良かったな、と素直に思いました。授業後のアンケートデータにもあるように、授業前と比べて生徒たちの自己肯定感が高くなったのが見て取れます。これはたくさんの大人たちと関わって、これまで生徒たちの中にあった「◯◯じゃないといけない」といった固定観念がいい意味で崩され、「◯◯でもいいんだ」と受け取れるようになったからだと思います。

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キャリアガイダンス後の生徒アンケート。
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キャリアガイダンス当日の生徒の様子を笑顔で見る衣川先生。

ロペス:たしかに、今回のキャリアガイダンスではたくさんの方がゲストとして来られていました。その中で気になったことなんですが、宇高くんに限らずたくさんの卒業生がゲストとして参加されていましたよね?普段から卒業生と在校生が関わる機会って多いんですか?

衣川先生:そうですね。地域密着型の高校なので、卒業生にというより地域の大人と関わる機会がとても多いです。卒業生と関わる機会はその中の一つ。北条高校では、教室の中で学びが完結するのではなく、地域社会まるごと学びの場だと考えています。加西市や地域の方々の協力もあり、インターンシップや地域活動に快く高校生たちを受け入れてくれています。

ロペス:学校教育と社会教育が、こうもうまく連携している例ってあまり聞いたこと無かったです……。すごいですね。高校生でありながら地域の社会人と関わって学んでいる点も素敵です。

衣川先生:この地域では「高校生」「社会人」といった棲み分けはあまりありません。高校生であれ、先程申し上げたように日々の学校生活の中で地域の方々と関わる機会は多くあります。高校生だから社会と関わっていない、なんてことはありませんね。みんな地域社会に関わりながら生きているという意味では、全員「社会人」です。

ロペス:みんな地域の一員として……。北条高校って、お話を伺っていると文字通り「開かれた学校」なんだと思いました。

衣川先生:はい。少子高齢社会の真っただ中にあって、消滅可能性自治体である加西市にあるのが北条高校です。学校内でこれまで通りの教育をし、ただ待っているだけで受験生が集まってくるなんて時代でもありません。地域教育の要として、我々から地域に出向いたり、連携を模索したり、「攻め」の姿勢でないとこれからもどんどん生徒数が減っていく。若い人が育たない地域はこの先生き残れません。学校はもちろんのこと、地域一丸となってこの難局に立ち向かうべく、できることから取り組んでいきたいと思っています。

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ロペス:生徒たちの地域活動への積極的な参加や、今回のようなキャリアガイダンスはその一環。地域教育を担う北条高校の「攻め」の姿勢がそこにあらわれているんですね。今日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。地域の温かいつながりがある加西市、また来たいと思いました。

衣川先生:こちらこそ、ありがとうございました。またいつでも遊びに来てくださいね。

キャリアガイダンス参加者の声

取材を終えて

地域教育の要である北条高校。そこは学校の先生方と地域住民が手を取り合って生徒たちの教育に協力する「開かれた学校」でした。

今回「たくさんの人の価値観、考え方に触れてほしい」との想いのもと実施されたキャリアガイダンス。衣川先生へのインタビューの中で、「キャリア教育に夢って必要なものだと思いますか?」とお聞きしたところ、先生は「必ずしも夢が必要なわけではない」と。

ただ「肯定的に未来を描けるきっかけになってくれれば」と話されていました。
大きな夢や希望でなくても、小さな目標や想いでもいい。この先進んでいく道が、少しでも明るく見えるような機会になってほしい。そうした想いで、今回のような教育活動に取り組まれているんだそうです。

地域の人たちが「協力しよう!」と快く思える学校であり、卒業生のOB・OGが「生徒の力になりたい」と帰ってくる学校。その背景には、地域を上げて教育に取り組む文化がありました。

「働くって、社会に魔法をかけることだと思うんです」

あの澄んだ目の生徒の言葉を借りると、北条高校という学び舎は、たくさんの人たちの優しい魔法でつくられた環境なのかもしれません。

兵庫県加西市。
少子高齢化、人口流出の進むこのまちで。
地域教育の「最後の砦」にかけられた魔法は、そこで暮らす人たちや地域のこれからを明るく照らし続けています。

撮影協力
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出張写真 coco*roni
カメラマン 櫻井 季咲
ポートフォリオ
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こちらから。

この記事を書いた人

ロペス

1992年、奈良県生まれ。少年の心を忘れない26才児。paletteの編集長兼ライター。通称「ロペス」。畿央大学教育学部を卒業後、東京の人材派遣会社に就職。その後小学校教諭、塾講師、認定子ども園保育補助を経て現職。人、モノ、場所の魅力を引き出し、記事として発信するため日々奮闘中。目下の悩みは「終わらない成長期」。ダイエット方法募集中。