播磨の教育に新しい選択肢を〜イエナプランおしゃべり会〜【教育サークル「枠或(わくわく)」】

学校教員は世間知らず。社会のことをろくに知らない20そこらの年の新任先生が子どもたちを教えているーー

自分が大学を卒業した2014年。社会から浴びせられる学校教員へのバッシングは苛烈さを増し、学校と社会の乖離が叫ばれていました。


あれから6年。時代の潮流が変わり、

「学校教育外の教育を学びたい」

「教育の枠にとどまらず、もっと大きな視野から学びたい

と語る教員やその卵に出会う機会が増えています。学校園や教育機関ではそうした教員たちが既存の学校教育にとらわれない斬新なプログラムを開発して実施。魅力的な取り組みが各地で行われるようになりました。

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兵庫県加西市にある北条高校では地域の大人をゲストティーチャーとして招聘。教職員の尽力のもと、開かれた学校が体現されています。
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キャリアガイダンスなどの取り組みにも積極的。
詳細はこちらから。
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同県加古川市にある県立農業高校は斬新な進路講演会を実施。
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地域の先達たちから進路について学ぶ機会も。
詳細はこちらから。

既存の教育に課題意識を持ち、諸外国の教育を学んで取り入れようとする者や、逆に日本古来の教育を学んで現在の教育に生かそうとする者など、自分が学生時代と比べると「学びの幅」が縦にも横にも広がっているように思います。

ここ播磨地域では、そうした萌芽が徐々に育ち始め、学校教育だけにとどまらない開かれた教育を学ぶ学習会が増えてきました。
今回はそんな学習会のひとつ、教育サークル「枠或(わくわく)」主催の「イエナプランおしゃべり会」についてご紹介します。

教育サークル「枠或(わくわく)」とは……?

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枠或グループは、自立した学び手を育てることを通して子どもたち一人一人の幸せを願う、兵庫県播磨地域を活動の中心とした2017年立ち上がったグループです。学習会や大人の社会見学旅行など、公教育に限らず様々な視点から「教育」というものを考えています。

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代表を務めるのは兵庫県宍粟市の小学校教諭、門積 健太先生。

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自身も長期休暇を利用してオランダでイエナプラン教育を学んだ経験があり、日本の教育と諸外国の教育、その両方の視点をもって日々クラスで実践をされています。

これまで開催された「枠或(わくわく)」イベント

「クラスが荒れ始める」と言われる5月に行われた学習会。
長期休暇中に海外の教育の視察に訪れたメンバーによる報告会。
京都の教材研究サークル「G会」との合同合宿。
播磨地域の教育系プレイヤーを公民問わず募り行なった学習交流会。
兵庫県姫路市の地場産業「皮革」について「まず教員自ら学ぶ機会を」と社会見学を実施。

イエナプランおしゃべり会【枠或】

これまで兵庫県播磨地域を中心に、多様な教育系プレイヤーたちと学び合ってきた教育サークル「枠或(わくわく)」。今回は「イエナプラン教育」を学びに、約半年間オランダの学校へ学びに行っていたメンバーによる報告会が行われました。

イベントの詳細はこちらから。

会場は兵庫県姫路市のコワーキングスペースmocco。

コワーキングスペースmoccoのHP。

募集段階からすでに満席状態だった今回の枠或学習会。播磨地域で諸外国の教育に触れる機会があまり多くないためか、当日は会場いっぱいの参加者が集まりました。

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当日の動画はこちらから!(撮影協力:田久保 健太

そもそもイエナプランとは何か?

「イエナプランって名前はよく聞くけど、そもそも一体何なの?」という方のために、ここで少しイエナプラン教育をご紹介。

イエナプラン教育とは、ドイツの教育学者で当時イエナ大学で教鞭をとっていたペーター・ペーターゼンが、同大学の実験校で1942年に始めた教育を起源とした学校教育のこと。
起こりはドイツであるものの、現在最も盛んだと言われているのは過去に子どもの幸福度ランキング1位をとり、教育立国でおなじみの北欧オランダ。

1960年代にスース・フロイデンタールによってオランダで広がったイエナプラン教育は、フレネ教育や欧米各地の異年齢学習の影響を受けて独自の発達を遂げたため、オリジナルのイエナプラン教育と差別化するために「オランダ・イエナプラン教育」と呼ばれています。昨今日本の教育現場で聞くイエナプランも、そのほとんどが「オランダ・イエナプラン教育」の流れを組んだもの。

オランダ・イエナプラン教育についての詳細はこちらの動画から。

オリジナルのイエナプラン教育が「メソッド(方法)」であるのに対し、オランダ・イエナプラン教育は「コンセプト(概念)」だとの前提に立っており、以下の『イエナプランの20の原則』にもとづいて、教育者が各地域や学校、学級に合わせた柔軟な教育手法をとられるようになっています。

イエナプランの20の原則』の詳細。

イエナプランを取り巻く日本の現状

日本では、教育現場の一斉指導批判から「多様性」「主体的・能動的な学習」「社会で通用する力」といったワードが頻繁に聞かれるようになり、「異年齢学習」「教科横断型のカリキュラム」「生活や社会とつながる学び」といった特徴を持ち親和性の高いイエナプラン教育を積極的に導入する動きも増えてきました。

日本イエナプラン教育協会のHP。
国内初の協会認定イエナプランスクール、大日向小学校のHP。
国内初の公立のイエナプラン教育校、福山市立常石小学校のHP。

イエナプラン教育に賛同するまでいかなくとも、今ある教育を批判的に見直し、よりよく改善するヒントがあるのではないかと学んでいる教育者も多く、国内でも大きな広がりを見せています。

学びの生まれる環境は「安心・安全」から

イベントの冒頭、「枠或(わくわく)」代表の門積先生からこのイベントのゴールとルール、そしてタイムスケジュールが共有されました。

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学びの環境をつくるにあたり、一番の基礎になるのが「安心・安全」な場であること。
参加者が「この場では何が行われるのだろう……?」「この場ではどういった振る舞いをすれば良いのだろう……?」といった不安を抱えたままだと内容に集中できません。

事前に「ここはこういった目的で、こうしたルールで、こういったタイムスケジュールで進んでいきますよ」としっかり提示することで、安心・安全な場を準備し、参加者が学習に集中できる環境を整えられました。

また「場のルール」に発言の自由、発言しない自由を明記することで、「正解を言わなきゃいけない」「変なことを聞いちゃいけない」といった主体性を阻害するような要因を排除。積極的に参加できるよう土台が組まれ、イベントが始まりました。

イエナプラン4つの基本活動【遊び】

イエナプラン教育には4つの基本活動、すなわち「対話(サークル対話)」「遊び」「仕事(学習)」「催し」がありますが、そのうちの一つである「遊び」について最初に体験。

用いられたのは株式会社アソビジのコーポラティブゲーム「てがみち」

トランプやUNOといった対戦型ゲームではなく、コーポラティブ、つまり参加者が力を合わせて共通のゴールへ向かう協同的なゲームです。

「協同が必須のゲームのため、自然とコミュニケーションが生まれる。自身のクラスでもよく取り入れてやっているんです」と門積先生。
言葉通り、参加者の間でコミュニケーションが盛んに行われ、新しいルールをつくって楽しむグループまでありました。

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イエナプランにおける「遊び」では、お互いにお互いを必要としていることを体験を通して学びます。今回はゲーム「てがみち」を通して、自分一人だけではなく、様々な人の力を借り、また貸しながら協力し合って目標を達成する大切さを学ぶことができました。

対話を通して学ぶ【おしゃべりイエナプラン】

続いてはオランダにてイエナプランを学んできたメンバーによる報告会。

「イエナプランが何なのか、知識は本を読めば何となくわかる。ここでは実際におしゃべりを通してより深く知られるような時間にしたい」と、冒頭で門積先生がお話されたように、対話を中心として学びが進められました。

最初にお話ししてくださったのはおかんさん。

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9月から12月までオランダへ渡り、現地でイエナプランを学んできたおかんさんはイエナプランが「共に生きる教育」だと感じたそう。

「すべての人が共に生きていくために必要なことって、なんだと思いますか?」との問いかけが参加者に投げかけられ、隣近所の人たちと対話がスタート。

「一人ひとりが違った価値観や個性を持っているといった前提を理解し合う必要がある」

「コミュニケーションを取り合って、違いを乗り換える姿勢が大事」

「LOVE&PEACE(愛と平和)」

など、参加者からは様々な意見が上がりました。

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わからないところは参加者同士で聞き合ったりする場面も見られ、まさしく学び合っている環境でした。

「オランダ・イエナプランではこの『すべての人が共に生きていく』社会の実現のためにオランダ・イエナプラン20の原則が設定され、各スクールで教育を実施している」とおかんさん。20の原則についてそれぞれ説明があったあと、「共感できる部分と共感できない部分があると思います。どう感じたか教えてください」と参加者側へ対話のバトンが送られました。

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「知識や技術的な話より、人間としてどう在るかといった資質的な記述が多いように感じ、その部分にとても共感した」

「たしかにその通りで、人間について書かれている内容が多く、教育に限った話だけでなく人間全体に言えることだと思った」

など、各グループで議論が盛り上がり、参加者たちは対話を通して20の原則はオランダ・イエナプランの「コンセプト(概念)」の位置付けであるといった気づきに至っていました。

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また、イエナプラン教育の4つの基本活動「対話(サークル対話)」「遊び」「仕事(学習)」「催し」についても説明。実際に現地でどのように行われていたのかが紹介されました。

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参加者から「『評価サークル』って何ですか?」と質問が出た際は、回答者として兵庫県尼崎市でイエナプラン教育に取り組むキタバが加わり、「対話」活動における評価サークルについて説明。「活動に対してポジティブな振り返り、つまり『◯◯くんのここが素敵でした』のようなリフレクションを行うサークルのことです」と回答してくれました。

このように発表者が提供した話題を参加者同士で話し合い、疑問点や気になった部分についてはみんなで解決していくという、対話型の学びが行われました。

身体性を伴った”学び”を【体感イエナプラン】

「実際にイエナプラン教育を体感してみよう!」との趣旨で設けられたこの時間は、元明石市小学校教諭でオランダ・イエナプラン教育を現地で学んできたパンダさんが担当。
知るだけでなく、実際に体験を通した学びを大切にしたいとの意図から、「チョコレート」をテーマにイエナプランではよく知られている「ワールドオリエンテーション」が行われました。

”ワールドオリエンテーション”とは……?
世界を学ぶための学びとされる、イエナプランのハートにあたる活動。
日本の「総合的な学習の時間」と同一視されることが多いが、理科や社会だけでなく、より多くの教科領域を横断しながら行われる。

子どもたちの生活に関わりの深いテーマを、子どもたち自身から発せられる「問い」を軸に進めていく探究型の学習で、身近なテーマを掘り下げ探究していくうちに、学びが拡がって世界と少しずつ関わっていけるような流れになっている。

会場の中心にあるテーブルに広げられたチョコレート菓子。これらを見て、食べて、感じたことや気になった点などをポストイットに書き出してホワイトボードで共有。

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その後、カテゴリーで分けて「問い」のグループをつくり、それぞれが気になる問いについて手元のスマートフォンを使って調べたり、周りと相談したりといった探究活動を行いました。

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学習者から発せられた「問い」を中心に学びが進む、こうした学習者中心の学びの形はイエナプラン教育ならではの様子。参加者は普段学校で行なっている教育と比較対象しながら、活動を楽しんでいる様子でした。

学びを広げ、磨き上げる【対話サークル】

最後はこの日一日の振り返りを小グループにわかれて実施。各グループにはイエナプラン教育を実際に現地で体験してきたファシリテーターが加わり、参加者からの質問に答えたり、イエナプランについての感想を聞いたり、意見交換を行いました。

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「今回はイエナプラン教育をみなさんの学校に取り入れてほしいといった趣旨ではなく、知ることによってみなさんの選択肢が増えればいいなと思って行いました。これまでの『枠』を楽しみながら広げていく、ストレッチしていくイメージで学習会『枠或』を行なっていますので、是非また遊びに来てください」と、門積先生の締めの挨拶があり「イエナプランおしゃべり会」は閉会。

「まだまだ話し足りない!」といった声もあったので、積もる話のあるメンバーで懇親会が行われ、教育者同士の繋がりを深められました。

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イエナプランおしゃべり会【教育サークル「枠或(わくわく)」】を終えて

イエナプラン教育では、表層的な知識だけでなく実際に体験して学ぶことでより「ホンモノ」の学びを得ることができるとした「真正性(オーセンティシティ)」が大事にされており、学習対象はできる限り「ホンモノ」に近いものを選びます。

今回の「イエナプランおしゃべり会」においても、オランダの現地で「ホンモノ」に近い学びを得た方からお話を聞くことで、本や論文、ネット記事といった媒体とは違う濃い学びをすることができました。

「ホンモノ」から学び、対話や思考を通してさらにその学びを深めていく。

枠或がこれまで取り組んできた学習会も、まさにこの言葉通りでした。
今後も「知ったつもり」で済ますことなく、「ホンモノ」との関わり合いを通して学んでいく姿勢を大事に、播磨地域の教育を盛り上げていって欲しいと思います。

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この記事を書いた人

ロペス

1992年、奈良県生まれ。少年の心を忘れない26才児。paletteの編集長兼ライター。通称「ロペス」。畿央大学教育学部を卒業後、東京の人材派遣会社に就職。その後小学校教諭、塾講師、認定子ども園保育補助を経て現職。人、モノ、場所の魅力を引き出し、記事として発信するため日々奮闘中。目下の悩みは「終わらない成長期」。ダイエット方法募集中。