このまちで生きるということ

『変わろうと誓った街で青春は、君に捧げて生きていたかった』

palette コラム 姫路 三木雄輝

青過ぎた私は、深みに溺れていた。
ありふれた想いを抱きしめてくれた街。
日常を包み込む、何もない場所を
ひたすら生きていた。

路地裏に青春が、そっと逃げ込んで
涙を流し、俯瞰していた。


『傷ついて暮らした街で青春は、君に抱かれて眠りたかった』

palette コラム 姫路 三木雄輝

色あせた大人になった。
すり減らしながら、深みを増していく。
あの日、生きるはずだった時間は
重くのしかかって
私の中で消えずにいる。


2012年の春、
私は姫路でも有数の進学校を卒業し
関東の音楽大学へ進学。

学友の中では珍しく芸術の道を選んだ。

分かってはいたことだが、
知らない土地に頼れる仲間もいない状態は
孤独を加速させた。

夢を叶えるためなら何でも出来たけれど、
生活はとても楽とはいえなかった。

音楽大学卒業後、
モラトリアムは負債と共に延長された。

四大卒とは名ばかりで、
学生時代と同様に苦しい生活が続く。

「何者」にも成れない存在、

早く大成しなければという焦り、

報われない虚無感、

社会的な劣等感を背負いながら、6畳半の部屋の中で音楽をつくりつづけた。


そんな生活も限界を迎えた。

何者にもなれず
透明な存在であり続けることが
耐えられなかったのだ。

初期衝動を失った私は、
ふと、ふるさとの空気に触れたいと思った。

palette コラム 姫路 三木雄輝

久しぶりに降り立った地元・姫路。
今の自分の全てをつくってくれた場所。
ふるさとは、何者でもない、何者にもなれなかった自分に
「おかえりなさい」と声をかけてくれた。

まちのシンボルである真っ白に輝く姫路城。
そこに続く城下町の風景は
何度も目にしてきたはずなのに、
とても愛おしく見えた。

「白鷺」の名を冠する姫路城を見ていると、
まるで自分が色あせた建築物のように思えてくる。

大成するために都会へ出て、多くの時間を費し、
その代償として青春を失った。

さよなら。

変わろうと誓った街で青春は死んだ。


これから私は
また東京に向かう。

置いてきた夢を掴みにいく。

おそらく酸欠状態で帰ってくるだろう。

そして
この町で息を深く吸い込む。

逃げ場にはしない。
生きていくための場所にしようと思う。

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この記事を書いた人

三木 雄輝

1993年 兵庫県姫路市生まれ。姫路市の淳心学院中高等学校を卒業後、神奈川県川崎市の洗足学園音楽大学に進学。
卒業後、東京を中心にギタリスト・作詞作曲家として活動中。2015年 エマージェンザジャパン ベストギタリスト賞受賞。美しい言葉をギターサウンドに乗せた耽美的なロックを追求。趣味は執筆と写真を撮ること。