【兵庫県・姫路市】本と、本屋さんのこれから。【MTW vol.2:三皷 由希子(古書みつづみ書房)】

身の回りで本を読む人が、本当に少なくなった。

「腰を据えて本に向き合う余裕がない」

「情報収集の手段ならもっと手軽な方法がある」

そうした話をよく聞くようになりました。
これは肌感としてだけでなく、実際に数値にあらわれています。

若い世代の読書離れは歯止めがきいていない。

危機感を持った出版業界や本屋業界は様々な工夫を凝らして活路を模索していますが、書店数は年々減少。苦境に立たされています。

そんな中、業界人だけでなく「本を愛する人」たちが有志で立ち上がり、読書文化の再興に向けての動きも出てきました。

本と人が出会える場所を誰もがつくれるように。まちの図書館『まちライブラリー』
今回登壇していただいたクロギタロウ氏もその一人。
最近は「文学Youtuber」といった存在も。

生き残りをかける業界と「本を愛する人」たち。
本と書店、読書文化を守り広げていくために。

今回は「本」に関わるお二人が登壇したイベント「南町Talking weekend」を取材しました。

南町Talking weekend

姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
vol.1の様子。
姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房

「南町 Talking weekend」は、姫路・はりまにおいて、まちづくり・デザイン・教育などの特定のテーマにちなんだゲストを囲み、お酒と軽食をあてにフランクに情報交換できるイベント。姫路城が見えるコワーキングスペースmoccoの6階イベントスペースにて定期的に開催されています。

主催のコワーキングスペース「mocco」。
月に一度、継続的にイベントを行なっています。

vol.2「小さくはじめて、コツコツ育てる『小さな本屋はじめました』」

姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房

vol.2のゲストは古書みつづみ書房店主/伊丹市立図書館ことば蔵カエボン棚主催の三皷 由希子さん。
第一部では書店閉店ラッシュの最中、小さな古書店をオープンして3年目を迎える古書みつづみ書房店主 三皷 由希子さんから、書房の運営を紐解きながら”小商いのリアルなはなし”を伺いました。

第二部では書漂家のクロギ タロウさんとの対談が開催。本への愛があふれるお二方の熱いトークも合わせてお楽しみいただきました。

三皷 由希子(古書みつづみ書房)

1966年大阪生まれ。立命館大学文学部史学科卒。印刷会社勤務を経て、2016年にシェアオフィス『ベランダ長屋』に参加、「古書みつづみ書房」を開業。
会社員時代から「本とお茶」をテーマに週末活動を継続。京都府和束町「お茶の大学」、伊丹市立図書館ことば蔵「カエボン部」を主催。その他、伊丹市の文化イベント「伊丹オトラク」や「鳴く虫と郷町」のサポーターや、まちライブラリーのサポート活動を行う。最近では、地域企画に関わる中で見いだした「新しい公共」をテーマに、文化財ボランティア「いたみアーカイ部」や「あじさい食堂」の企画にも参画。夫ひとり、猫2匹の4人家族。

古書みつづみ書房のHP。
まちライブラリーの詳細はこちらから。

クロギ タロウ(書漂家)

1990年宮崎県生まれ。大阪大学文学部人文学科卒。会社員の傍ら、週末に読書文化を盛り上げるための活動を展開中。本の海を漂う「書漂家」を名乗り、運営中のブログ「Booksだらり庵」にて、立ち寄った本屋、ブックイベントなどの本に関する情報を発信。2019年より、人生に寄り添う「撮っておきの1冊」を持つ人のポートレート撮影を行う「ホントレート(本とあなたのポートレート)」を積極的に展開。現在撮影依頼を大募集中。

書評家クロギ タロウ氏のインタビュー。
「ホントレート」はこちらから。

クロスイベント「Live! Live! Library!」

姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房

好きな本を持ち寄り、「タイトル」「著者名」を記入した葉型の紙を木に貼っていくことで、様々な「好きな本」が集まった「本の木」が育つというイベント。期間中はインスタレーションとしてコワーキングスペースmoccoに設置された。

イベント詳細はこちらから。

古書みつづみ書房のこれまで

第一部の前半では、これまでの三皷さんと「古書みつづみ書房」の歩みについてお話をいただきました。

会社員時代はバリバリの仕事人間で朝から晩まで働き詰めだった三皷さん。人事・採用担当もされており、若い社員の成長を見守ってきたこともあって「みんなのお母さん」的ポジションだったそうです。

そんなお忙しい中、休日の時間を使って関わっていた本のイベントが徐々に本格化。「ちょうどいいタイミングだった」と開業を決意します。

現在の店舗は交通量が多く、コンビニの目の前という好立地。コンビニでたばこを吸っていた人がふらっと立ち寄ってくれたり、若い学生さんが遊びにきてくれたりもするそう。明るく気さくに話しかけてくれる三皷さんのお人柄もあり、色んな人が「古書みつづみ書房」に訪れています。

姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
「古書みつづみ書房」
姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
三皷さんの明るい人柄に、つい長居して住まうお客さんも。

さらに書店としてだけでなく、お店を使ってトークイベントを行ったり外へ出向いて出店したり、幅広い形態で「本」に関わる活動をされています。

三皷さんの活動は多岐にわたり、これまで本と接点の無かった人たちにも出会いを提供されています。

お店で絵本の鑑賞会を行ったり……。
トークイベントを行ったり……。
お祭りで出店されたりしています。

小商いの道

続いては小商いについてのお話。「古書みつづみ書房」を開業して三年目を迎える今年。これまでどういった形でお仕事をされてきたのでしょうか。

売上の比率はスライド1の通り。大きく分けて店頭7割ネット3割だそうで、ここ最近はネットの売上が伸びているとのことでした。ネット販売ではいわゆる「売れる本」を中心に選書しており、店頭販売とは違った形のライナップとなっています。

姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
スライド1
ネットショップはこちらから。

イベントについては収益というよりも「広告宣伝」といった捉え方をしており、スライド3にある「出会いがあれば買う派」への波及効果が見込めるとのこと。

ターゲットとなる顧客は様々で、古書愛好家は好きな作品であれば糸目をつけず購入し、ブックオフ派は世相を反映した選書をすると購入が増えるそうです。イベント出店、ネット販売、店頭販売といった多岐にわたる販路はこうしたグラデーションのある顧客ニーズに対応して生まれているんですね。

姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
スライド2
姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
スライド3

最後にネット・SNS文化の急激な成長と本屋ビジネスのお話もありました。

メリットは古書の仕入れがしやすくなったことと、情報発信が容易になったこと。昔は紙の目録をえんぴつでチェックしながら仕入れをしていたそうですが、今ではネットで簡単に済みます。また商品情報もSNSを使って顧客へ容易に届けることができるようになったとお話されていました。

反対にスマホやPCで簡単に情報を仕入れられる時代になったからこそ、「本」の持つ価値が何なのか、接点が無い若い世代へどうアプローチをしていけばいいのかが課題となっているそうです。この辺りは第二部の対談で詳しくお話を聴くことが出来ました。

古書店主×書漂家 「本と本屋さんのこれから」対談

第二部は「古書みつづみ書房」の三皷さんと、書漂家クロギタロウ氏の対談。「本に興味関心が薄い層へどうやって本との出会いを届けるか」「今問われる本屋・本の価値とは何か?」といったテーマについてお話がされました。

「読書習慣は幼い頃から身の回りに本が無いとなかなか付かない」とタロウさん。家族でご飯を食べに行った帰りに本屋さんへ寄ることが多かったタロウさんにとって、本は身近な存在だったと言います。

三皷さんは「思ったより今の子どもでも本を読んでいる姿を見かける」とのこと。電車の中や生活の場で本を手にとっている姿を見ると嬉しくなると話されていました。

本のデザインの話では、出版社も本の装丁に工夫を凝らしており、漫画家の方が装丁を描いたりアニメ風の絵にしてみたりと手に取りやすいデザインを心がけていった話が。たしかに書店で平積みされている本を見ると、昔の作品がポップな装丁で陳列されているのをよく見かけるようになりました。

お二人の話からは、どの分野でも本に関わる人たちは工夫を凝らし、生き残りをかけて試行錯誤をしているんだということがわかりました。

姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
photo by SAKASAMA WORKS

話題は本から本屋さんへ。

お店の数も減り、苦境に立たされている本屋業界。こちらも生き残りをかけて様々な趣向を凝らした本屋さんが生まれています。

一例に上がったのがショールーム化した本屋さん。ネットのECサイトで安く本が買える昨今、下記リンクのような事例も数多くあがっています。

書店で本を購入するといった体験に価値を感じない層にとっては自然なことかもしれませんが、本を売って収入を得ている本屋さんにとってはたまったものではありません。逆にこれを逆手に取ってサービス展開をしているところも出てきており、今後の動向が気になるところです。

お二人の対談の後は、参加者の皆さんも交えておしゃべりする形へ。

小学校教諭の方が参加されていたので「読書感想文や朝の読書時間っていったいどうなのよ?」といった話が持ち上がっていました。強制的に読書に触れさせるのはいかがなものかといった意見がちらほら。接点を多く持つことは大事なことですが、無理に触れさせるのは自分もどうかと思います。
その先生は小学校の学級文庫でまちライブラリーを行っており、環境から本や読書に関わることができるよう取り組まれていました。無理なく自然な形で読書を楽しめる環境づくりはとても素敵だったので、是非広がってほしいです。

質疑応答の場面では「ブックカバーをつける派?外す派?」といった質問も。
ブックカバーも作品の一部であるから取ってしまうのはどうなのかといった意見から、逆にかわいいブックカバーがあるからこそそれを使って本を読みたいと思うんだといった意見もありました。

姫路 palette 南町Talkingweekend コワーキングスペースmocco みつづみ書房
photo by SAKASAMA WORKS

最後は「人から進められた本を読もうと思うか。自分のアンテナで探した本を読むか」の話へ。
会場では半分に意見が分かれ、「信頼する人からのおすすめであれば読もうと思うかも……」といった条件付きの意見も出てきました。

書漂家のタロウさんは「ホントレート」という企画に取り組まれており、大切な本との思い出をインタビューし、読書している姿とともに紹介されています。

記念すべき1撮目は私達をインタビューしていただきました。ミヒャエル・エンデ『モモ』。


「読んでいる姿がカッコいい!」「あの人が読んでいる本なら私も読んでみたい!」といった読書への動機づけをできればと話していたので、「誰が」「どういったように」読んでいるのかが伝われば読書文化が広がっていくかもしれません。実際にこの記事を読んで身の回りで『モモ』を購入した人が3人いらっしゃいますからね。私は応援しています。

2時間があっという間に過ぎ去り、いよいよ終わりの時間に。イベント終了後も本好きの方々で話が盛り上がっている様子も見られ、会場はとてもあたたかい雰囲気に包まれていました。

「南町 Talking weekend」の第二回。こうした形で次世代へ渡していきたい文化も紹介していければなと思います。今回ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!

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この記事を書いた人

ロペス

1992年、奈良県生まれ。少年の心を忘れない26才児。paletteの編集長兼ライター。通称「ロペス」。畿央大学教育学部を卒業後、東京の人材派遣会社に就職。その後小学校教諭、塾講師、認定子ども園保育補助を経て現職。人、モノ、場所の魅力を引き出し、記事として発信するため日々奮闘中。目下の悩みは「終わらない成長期」。ダイエット方法募集中。