「ありふれた日常に『おとぎ話』を仕掛ける」【イベント制作団体:オトギボックス】

こんばんは。
播磨の魅力を発信するメディア「palette」のライター、ロペスです。

ここ最近、播磨地域でイベントの企画・運営をする際よく耳にする団体があります。
大阪音楽大学のイベント制作団体「オトギボックス」。
クラシックの生演奏と絵本の読み聞かせを融合した「絵本のおんがく会」や、銭湯でクラシック音楽の演奏会を行う「bathlive」など。斬新なアイデアで音楽の可能性を広げ、ジャンル横断的に活躍している団体です。

そのアイデアや企画力は地域のプレイヤーの心をわしづかみにし、「うちのイベントで出てもらえないだろうか」と毎回会議のテーブルに上がるほど。音楽の間口を広くし、様々な層に楽しんでもらえるよう工夫されたイベント毎回大好評で、幼児から高齢者まで幅広い層のファンに愛されています。

彼らのイベントに通底しているのは「音楽は楽しいものだ」という考え方。お高くとまるわけでもなく、大衆に迎合するわけでもない。ただ純粋に音の可能性を楽しんでいる。

学生時代から音楽の授業が苦手だった自分にとって、「おんがく」は音を学ぶ「音学」でしかなかった。でも、本来「音楽」って「音を楽しむ」ことだったはず。彼らの言葉の端々から感じられる「音楽」は、そんな大切なことを思い出させてくれました。

音を愛で、音で遊ぶ彼らがどういった過程を経て「音を楽しむこと」、「オトギボックス」へと辿り着いたのか。
加古川ライター、ロペスの人物インタビュー。今回はイベント制作団体「オトギボックス」の代表を務める梶本くんと、メンバーで作曲家の河野くんのお二人にお話を聞きました。

オトギボックス

兵庫 播磨 姫路 加古川 インタビュー palette 大阪音楽大学 オトギボックス

大阪音楽大学の学生によるイベント制作ユニット。近畿圏を中心に、親子を対象とした​絵本と音楽を使ったライブやリトミック、ワークショップを行っている。その他にも地域との共同開催イベントの企画運営、作曲家による楽曲提供やアーティストブッキングなど、幅広く活躍中。

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これまで手がけたイベント

ようこそ えほんのおんがく会へ

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bathlive

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photo by 竹下 将貴

メンバー

代表:梶本 大雅

兵庫県西宮市出身。西宮市立上甲子園中学校、西宮市立西宮高等学校卒業。現在大阪音楽大学の二年生で、地域を盛り上げる音楽イベントを総合プロデュースし、新しい音楽シーンを創り出す仕掛け人を育成する「ミュージックコミュニケーション専攻」で学んでいる。中・高と吹奏楽部に所属し、中学時代はマーチングで全国へ。高校時代は学生指揮者としてコンクールで指揮棒を振った経験もある。

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作曲家:河野 音弥

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photo by 竹下 将貴

兵庫県神戸市出身。神戸市立桃山台中学校、滝川第二高等学校卒業。現在大阪音楽大学の二年生。専攻はポピュラー、クラシックなどの作曲を幅広く学べる「ミュージッククリエーション専攻」。小学校からピアノに親しみ、中・高は吹奏楽部に所属。高校時代に尊敬する作曲家、樽屋雅徳の指揮で演奏した経験から作曲家を志す。

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「音楽」との出会い

ロペス:ここ最近音楽関係の人にインタビューをする機会が増えてきて、ついに大阪音楽大学に来てしまいました。こんなオシャレな教室でインタビューが出来るなんて……。

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梶本・河野:ようこそ(笑)今日はよろしくお願いします。

ロペス:こちらこそ。今回はオトギボックスについて、そして梶本くん、河野くんのお二人について詳しくお話を聞かせていただけたらと思います。初めに二人が「音楽」に深く関わることになった経緯を教えてください。

梶本:音楽は小さな頃からピアノをしていましたが、正直あまり好きじゃなかったです。30分の練習時間をいかに遊んでサボるかを考え、7年間過ごしました(笑)転機となったのは中学生の時。たまたま吹奏楽部に入ったのがきっかけです。当時の部長が知り合いで、仮入部期間に声を掛けられて入ってからそのまま……って感じですね。入部後、全国に行くくらい強い吹奏楽部だと知り衝撃を受けました。

ロペス:最初はそんなに強い部活だと知らずに入ったんだ?

梶本:校舎に「全国大会出場!」みたいな垂れ幕が貼られていたり、賞状が飾られていたりしていたのはなんとなく知っていたんですが、正直そこまでしんどくないと思っていました。入ってからはめちゃくちゃ練習するし大変だしで本当に驚きましたね。すごいところに来てしまったと。

ロペス:吹奏楽では強豪だもんね。そりゃたいへんだ(笑)河野くんは?

河野: 僕も小学生からピアノを習っていて、中学高校と吹奏楽部に入っていました。中学は大雅(梶本)が通っていたところほど強豪では無かったんですけど、高校はレベルが高かったですね。合宿のときに来てくださる講師の先生方は豪華でしたし、その場でバンドが出来そうなくらいたくさん来られていました。

梶本:いいなあ……。うちの地域の高校は図書館でレッスンとかやったよ。みんなで机片付けたりして。

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ロペス、河野:(笑)

河野:本格的にこの道に進もうと思ったのは高校の定期演奏会で作曲家の樽屋雅徳さんと出会ってからです。ゲストとして来られていた樽屋さんの指揮で演奏をする機会をいただき、その翌年、樽屋さんが吹奏楽部のために「眠るヴィシュヌの木」という曲をかいてくださったんです。僕はそれまで「曲は演奏するもの」だと思っていたのですが、「曲をつくる」選択肢もあるんだと気づき、作曲家という仕事を意識し始めました。

ロペス:なるほど。それで河野くんは作曲について学べるミュージッククリエーション専攻で学んでいるんだね。

音楽を仕事にするという選択

ロペス:ちなみに、二人の大阪音楽大学へ進学しようと思ったきっかけって何なの?音楽大学となるとある程度進路は限られてくるし、かなりの覚悟がいるんじゃない?

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梶本:僕は大学受験の際に書いた志望理由書がきっかけですね。当時は別の大学を受けようと考えていたんですが、推薦入試の小論文でやりたい事を書いているうちに「自分は音楽の道だ!」と決意が固くなったんです。結果、両親や周りの反対を押し切って大阪音楽大学に入りました。

ロペス:おお!周りの反対を押し切ってまで?

梶本:だってもう大学生ですよ?高校までずっと真面目に勉強してきたんです。大学になったら自分のやりたいことをしたいじゃないですか。また大阪音楽大学は実践的なカリキュラムも多く、コンサートをつくったりプロジェクトに参加したり、一年生からたくさん経験が積める大学です。ただ単位のために講義を受けるのではなく、実践し、課題を見つけ、学ぶ動機を持って講義に臨める。だからこそこの大学で学びたいと思っていました。

ロペス:そこまでの想いがあって大学選択を……。総合大学とかだと「何となく大学に進学しました」って人が多かったから、純粋にびっくりした。河野くんはどう?

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河野:僕は高校三年生の頃に大阪音楽大学の先生から作曲のレッスンを受けていたので、当時から進路の一つとして音楽大学の選択肢はあったんです。「少なくてもいいから毎日曲をつくりなさい。送ってきたら見てあげるから」と言われ、毎日曲をつくって送っていました。途中先生の仕事の関係で「忙しくて見られないから」と連絡が来てもひたすら送り続けていましたね。

ロペス:毎日先生に送り続けたの!?

河野:はい。断られても「ここで引いたらあかんやろ!」と。それで「いや、本当に忙しいから」って言われて(笑)

ロペス:すごい熱量……(笑)。

河野:音楽で仕事をしたいとずっと思っていましたから。作曲を選んだのはそういった理由もあるんです。音楽の奏者に比べると作曲者って結構少なくて。大阪音楽大学でも楽器をする人は数百人くらいいますが、作曲、特にクラシックの編曲をする人は片手の指で収まるくらいなんです。また、今後Youtubeや動画媒体が強くなっていくにつれ、映像音楽のニーズも高まってくるだろうと見て、作曲と映像音楽を学べる専攻に入りました。

ロペス:そこは夢や理想だけでなく、現実もしっかり見て判断しているんだね。

リスクを負っての挑戦

ロペス:次にオトギボックスについて聞きたいんだけど、立ち上げの経緯を教えてもらえるかな。

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梶本:大学一年生の頃、僕の当時の吹奏楽部の友達三人と甲子園口のほんわか商店街で読み聞かせのイベントをしました。それがオトギボックス最初のイベントです。当日は予想以上に大盛り上がりで、たくさんのお客さんに喜んでいただけました。中でも驚いたのは親御さんたちが涙するくらい感動してくださったことです。

ロペス:大人が読み聞かせで泣いたと!?

梶本:そうなんですよ!その時「読み聞かせってすごい!」と思って、子ども対象だけじゃなく「親子」で楽しめる形のイベントを本格的にやり始めました。その際活動を継続的に行うにあたって何か屋号のようなものがあれば便利だと思い、「オトギボックス」という団体を立ち上げました。

ロペス:なるほど。イベントが先にあって、そこから団体が発足したってことなんだね。河野くんはどこからオトギボックスに関わったの?

河野:オトギボックスで読み聞かせをしている大阪音大声楽部の子とつながりがあって、そこから作曲の依頼を何度か受けていたんです。最初は曲をつくって提供するだけだったんですが、徐々に「こうした方がいいやろ」と主張をし始めて……。

ロペス:主張(笑)それはどういった?

河野:当時のオトギボックスは読み聞かせの際、簡単なピアノ伴奏やCD音源を用いていたんです。でも僕らって音大生じゃないですか?これを活かさない手はないと考え「生演奏でやろうよ」と提案したんです。僕は個人的に音楽は生でやってこそだと思っていて。音の振動が指先から体に走ってくる感覚だったり、引いていく音の余韻だったり……そういったものを楽しめる環境をつくりたいと思っていました。

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梶本:でもそれって結構難しいことで……。ちゃんと練習して力をつけて、もっとレベルを上げてからステージに立つべきだという考え方もありますし。

河野:そうなん?全然一年生からやったら良いのに。

梶本:って彼はずっと言うんです!簡単なことではないんですよ?イベントをひとつするにしても、営業や広報でたくさん走り回っているし、トントン拍子に見える裏で僕を含め色んな人達が苦労や調整を重ねてここまで来ました。

ロペス:(笑)。それでも挑戦したからこそ、信頼があって今の活躍があるんだよね。慎重タイプと推進タイプ、良いバランスでチーム組めていて本当に素敵だと思うよ。どちらが欠けても今の形にはならないだろうし。

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箱からおとぎ話

ロペス:最後にどういった想いで「オトギボックス」の活動をしているのか聴いてもいい?

梶本:いくつかあるので順番にお話ししますね。一つ目は「新しい絵本をたくさんの人に知ってもらいたい」という想いです。以前大学の授業にキングコングの西野さんが来られて、新しい絵本が中々売れていない現状を教えてくださいました。大人になって絵本に触れる機会って全然無いじゃないですか。自分が昔に読んだ絵本を子どもに読み聞かせますよね。だから新しい絵本の情報が入ってこないんです。

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梶本:過去の作品だけが読み継がれていく。今の時代に合った新しくて素敵な絵本がたくさん生まれているのに、それが知られていないのはもったいない。だから「絵本とおんがく会」では新しい魅力的な絵本を紹介しているんです。

ロペス:なるほど。たしかにこの歳で絵本に触れる機会ってないから、どうしても昔親に読んでもらった本しか知らない。それは業界的にもアップデートされないし問題だよね。

梶本:はい。二つ目は「『音楽』の楽しさをもっと広く知ってもらいたい」という想いです。一部の限られた人たちだけの音楽じゃない。もっと間口を広げていきたいんです。

河野:音楽って、言ってしまえば「娯楽」じゃないですか。無くても別に生きていける。そうしたものの価値を考えた時、お客さんに何を提供できるかを考え、憩いの時間であったり、癒しの時間であったり、何らかの意味のある時間を提供したいと思ったんです。

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河野:ただいい音楽、イベントをつくっても、お客さんに届かないと聴いてもらえないので、コンサートホールのような敷居の高い場所に限らず公民館や銭湯といった場所にまで繰り出したり、絵本の読み聞かせとコラボしたり、仕掛けを色々工夫しています。

梶本:彼の言う通り、音楽って色んな可能性を秘めているので、領域を限らずに様々な場所、コンテンツと融合すればもっともっと面白いものを生んでいけるんじゃないかと思っています。コンサートホールじゃないのに、こんな場所なのに面白いことができるんだって、その可能性にワクワクするんですよね。日常の中にそっと非日常を仕掛け、箱を開けてみるとおとぎ話のようなワクワクが飛び出してくる。「オトギボックス」の名の通り、そうした「箱」をどんどんつくっていきたいです。

ロペス:日常の中の非日常……それが「オトギボックス」なんだね。そんなワクワクするような箱がそこかしこにあったら、生活がもっと楽しくなりそう。是非播磨にもたくさんの「オトギボックス」を仕掛けていって欲しいです。今回は話を聞かせてくれてありがとう。

梶本・河野:こちらこそ、ありがとうございました!

撮影協力:竹下 将貴

インタビューを終えて

領域を飛び越えジャンルを横断し、様々な「おとぎ話」を日常へ仕掛けていくイベント制作団体「オトギボックス」。彼らのインタビューから感じられたのは、音楽の持つ可能性への信頼でした。

「音って、もっと楽しめるんじゃないか」

「音楽って、もっと可能性があると思う」


そんな話がインタビュー中何度も聞かれました。

自分の持っている専門性の可能性を信じること。そうすることで可能性や楽しみを探り当てる「嗅覚」が磨かれていったのかもしれません。
これから彼らの「嗅覚」が探り当てる可能性は何のか、どういったおとぎ話が紡がれるのか。ワクワクがたくさん詰まった箱の開く瞬間を楽しみにしています。

クラウドファンディング

オトギボックスは現在クラウドファンディングに挑戦中。彼らの想いの実現にぜひご協力ください。

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こちらから。

この記事を書いた人

ロペス

1992年、奈良県生まれ。少年の心を忘れない26才児。paletteの編集長兼ライター。通称「ロペス」。畿央大学教育学部を卒業後、東京の人材派遣会社に就職。その後小学校教諭、塾講師、認定子ども園保育補助を経て現職。人、モノ、場所の魅力を引き出し、記事として発信するため日々奮闘中。目下の悩みは「終わらない成長期」。ダイエット方法募集中。