【兵庫県・加古川市】「地元加古川にデザイナーという選択肢を」【デザイナー:西嶋 輝】

こんにちは。
播磨の魅力を発信するメディア「palette」のライター、ロペスです。

「かっこいい大人の背中って、どういったものだろう?」

「子は親の背中を見て育つ」と言われるように、身近な大人の生き方が子どもに影響を与えるのだと、前職の学校教諭の世界ではよく言われました。

子どもにとって、身近な大人である教師。その教師たるものどうあるべきかを考える際、何度も問い続けたこの疑問。ここ最近仕事で色んな方と出会い、語り、そしてその背中を見る中で、再び自分の中で気になってきました。

これから巣立っていくこどもたち、若い人たちに、自分はどんな背中を見せられるだろう。また、自分たちはこどものころ、大人たちの背中に何を見てきたのだろう。

今回インタビューさせていただいたのは、加古川で「and」のデザイナーとして活躍されている西嶋さん。姫路、大阪でキャリアを積んだ後、地元加古川でフリーランスとして独立。その背景には「若者が進路に悩んだ時、デザイナーという仕事を一つの選択肢として提示していきたい」という想いがあったといいます。

加古川ライター、ロペスの人物インタビュー。今回はこれから育つ若い世代に、デザイナーという「背中」を見せるため、覚悟を決めて地元に帰ってきた西嶋さんにお話を伺いました。

西嶋 輝(にしじま あきら)

兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン

1988年2月生まれ。生まれも育ちも加古川市で、野口南小学校、中部中学校を経て兵庫県立農業高等学校へ。その後姫路情報システム専門学校のCGクリエイターコースで学ぶ。
卒業してからは製版会社、広告制作会社でキャリアを積み、「地元にデザイナーという仕事を提示し、これから育つ若い世代の選択肢を広げたい」との想いから2年前に独立。現在加古川市で「and」を立ち上げ、グラフィックを中心に、幅広い分野でデザイナーとして活動している。

これまで手がけたデザイン

兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン
兵庫県加古川市を拠点に活動するデザイン事務所「and」のHP。

kamikatu舎

また「陽の目を見なかった紙を活用し、新たなプロダクトを生み出す」ことをコンセプトとする「kamikatu舎」で、日々捨てられていく紙を減らし、新たな商品として再利用するプロジェクトのディレクターとしても活躍中。

兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン kamikatu舎
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン kamikatu舎
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン kamikatu舎
kamikatu舎のHP。

365日アートワーク

さらにこれらの仕事の他に、自身の腕を磨くため「365日アートワーク」に取り組んでおり、毎日一つのデザインを作ってSNSで発信。日々新しい技術に挑戦している。

兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン 365design
8月20日「交通信号設置記念日」
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン 365design
10月12日「コロンブス・デー」
365daysproject についてはこちらのインスタアカウントから。

365日ポスター展 in HARAJUKU

2019年11.13-15の3日間、原宿にあるデザインフェスタギャラリー(Design Festa Gallery)にて初の東京個展を開催。
「見て、考えて、楽しめる」をコンセプトにたくさんの来場者がいらっしゃいました。

兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン 原宿 365日ポスター展
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン 原宿 365日ポスター展
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン 原宿 365日ポスター展
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン 原宿 365日ポスター展
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン 原宿 365日ポスター展
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン 原宿 365日ポスター展
兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン 原宿 365日ポスター展

手探りの進路選択

ロペス:いやー、ついに来ましたね西嶋さん。もうずっとインタビューしたかったんですよ。気合い入れて、張り切ってお願いします!

西嶋:いや、普通にしよう(笑)よろしくお願いします。

ロペス:出身が県農(兵庫県立農業高等学校)ということですが、デザインはどこで学ばれたんですか?

西嶋:デザインというデザインを学んだのは社会人になってからかな。県農の時は農業土木科だったし、専門学校ではグラフィックデザインという専門コースがなかったから。でもPhotoshopやIllustratorなど、基本的なソフトの使い方は学ぶことができたので、それは今でも役立っていますね。

ロペス:農業土木科ですか?そこからデザインっていうのは中々接点が見つけにくいんですけど……どういう経緯でデザイン関係に?

西嶋:高校二年生の頃から、雑誌なんかで見かける Tシャツのプリントデザインが大好きだったんですよ。その時から漠然とデザインの分野に興味があって、高校3年生で進路選択の時に「デザインやりたいなー」と思って、専門学校に進みました。当時知識がまったく無くて、本当にどういう進路を選べば良いのかわらなかった。もっと知識があれば、進路選択も変わっていたと思うんですけど、美大とか芸大とかも全然知らなかったんです。友達から「姫路にこんな専門学校があるよ」という話を聞いて、限りある情報の中から選んだのが姫路情報システム専門学校でしたね。

ロペス:そこではどういった勉強をされていたんですか?

西嶋:先程も言ったように、PhotoshopやIllustratorといった画像編集系ソフトの基本的な使い方を勉強しました。CAD(コンピュータを用いた製図システム)や3Dのアニメーションもやったかな。幅広く学ぶ環境だったので、色々な表現技術の触りを学べましたね。ただデザイナーとしての思想や哲学といった深い部分は、社会に出てからの方が学ぶ機会は多かったです。

ロペス:なるほど。実際今の仕事に生きているのはPhotoshopやIllustratorといったソフトの使い方を学べたところですか?

西嶋:そうですね。そのあたりのソフトは今でも使いますし、仕事に直結するような学びだったと思います。

​憧れのデザイナーと印刷

兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン
感銘を受けた永井一正さんのデザイン集。

ロペス:デザインに興味を持った高校生の時、好きだったデザイナーさんとかっています?

西嶋:いや、その時はいてなかったかな。ただ雑誌の紙面に並ぶTシャツを見て「あ、このデザインかっこいいな」とか「この文字のフォントいいな」って思っていただけでした。本格的にグラフィックデザインの道を決めたのは19歳の時ですね。専門学校の学年で言うと2年生の頃。姫路市立美術館で、東京の有名なグラフィックデザイナーの方の作品を見たんです。永井一正さんと横尾忠則さんって方なんですけど、その方たちのポスター作品を見てからかな、本格的にデザインやろうって思ったのは

ロペス:自分の将来を決めるような出会いが、そこにあったんですね。

西嶋:一応専門学校に入った時点で漠然とデザインやりたいとは思っていたんですけど、グラフィックデザイナーとしてやっていこうと気持ちを固めたのは、美術館で永井さんと横尾さんの作品を見た時ですね。その展示会では、お二方の作品展と一緒に印刷の技術や歴史を扱った展示もあったんです。古い昔の文字が使われている美術品があったり、活版印刷の歴史がまとめられていたり。それを見て面白いなと思って、印刷にも興味を持ちました。

​「作り方」と「届け方」

ロペス:卒業後、製版会社に勤めたのもこの時の経験から印刷に興味を持ったというところがあるんですね。ちなみに製版って一体どういうことをするんですか?

西嶋:例えば紙面の原稿あるじゃないですか。原稿を印刷する時って、その元になる「版」が必要になるんですけど……。

ロペス:版画の板みたいなものですか?

西嶋:厳密には違うけど、簡単に言うとそんなイメージ。それをフィルムでアルミの板に焼き付けて作る仕事をしていました。かなり昔の技術になるので今はほぼほぼ無いかな。最近は直接板に焼き付けるCTPという技術が主流になっていると思います。転写といって、フィルムにデータを写してから印刷用の板に焼き付ける。そういった技術が当時の会社にはあって、そこに携わっていましたね。写真を現像するような暗室なんかもあったんですよ。古い付き合いのクライアントさんと仕事をする中で、そういった昔の技術にもたくさん触れることが出来ました。製版会社では三年くらい務めたかな。そこでは印刷とか、製版といった印刷に必要なデータの作り方を学ばせていただきました。

ロペス:デザインというと、新しいとか今の時代ってイメージがあるんですけど、歴史のある技術にもたくさん触れてこられたんですね。その後は広告の会社に転職されたと。

西嶋:はい、大阪の広告制作会社に転職しました。広告の作り方を学びながら、グラフィックデザインに携わっていて、電車の中吊り広告やショッピングモールのビジュアル広告などを作っていましたね。CD(クリエイティブ・ディレクター)、AD(アート・ディレクター)、デザイナー、コピーライター、カメラマンといった色んな人達とチームを組んで仕事をしていました。そこで3年くらい務めたかな。見る人たちにとって、本当に必要な広告って何なのか。それを考え続けた3年でした。その過程でアイデアの出し方、デザインの思考といった今につながる大事なことをたくさん学べたと思いますね。

ロペス:なるほど。今お話を伺っていて思ったのは、製版の現場で「作り方」を、広告の現場で「届け方」を学ばれたのかなと。その2つはとても大事だと考えていて、自分自身ライターとして活動している中で、どれだけ「作り方」を学んで良いものを書いても、「届け方」がわからなければ読者に届けられない。読まれなければ記事として価値が無いんですよね。だから「作り方」だけでなく、「届け方」も大事なんだなって思いました。

西嶋: もう本当にその通りで、作り方と届け方、その両方はどちらも大事だと思います。また、「作る」「届ける」といった過程の中で特に大事にしているのは、クライアントさんの想いを聴くということ。自分のしたい表現をするというのではなく、相手が何を伝えたいのか、デザインを通してどういうアクションを起こしたいと考えているのか。そういった点をていねいに聴くようにしています。

兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン

加古川市にあるS&Nさんのヒアリング、コンセプトシートの一部。「安心・安全な素材を使った手作りのマフィンとスコーンのお店」というコンセプトを丁寧にデザインに落とし込みます。

兵庫 播磨 palette インタビュー 加古川 デザイナー and デザイン

来年1月発売のアウトドアに最適な行動食「PASS」の商品パッケージ

ロペス:聴くこと、ですか。たしかに西嶋さんに「palette」のロゴを作っていただいた時、「『palette』とは何か?」「どういうことをしていきたいのか」という点を聴いてくださいましたよね。以前受けた「加古川デザインセミナー」でも、講師の方が事前リサーチの重要性を強く訴えていましたし、そのあたりって本当に大事なんですね。

​加古川の地にデザイナーの選択肢を

ロペス:その後デザイナーとして独立。加古川で事務所を立ち上げられたわけですが、そこにはどのような想いがあったんですか?

西嶋:元々独立して加古川で働こうとは思っていたんです。先程言ったように、高校時代、進路選択にめっちゃ悩んだんですよ。情報が無いし、その分野の先達も中々見つけにくかった。だから限られた情報の中からしか考えることができなかった。あの時もっと情報があれば、選択肢が広がってグラフィックの仕事を早く見つけられたかもしれない。そういった想いから、デザイナーとして地元加古川で働こうと考えたんです。

ロペス:自分が手本となって、これから加古川で育つ世代に「デザイナー」という仕事を示していこうということですか?

西嶋:手本とまで言ったらおこがましいですけど、そうですね。これから進路に悩む子どもたちが、地方出身というだけで選択肢が狭まるような、そんな高校時代の僕と同じような経験をしてほしくないんです。もっと情報があれば。もっと近くに目指したい仕事の人がいれば、ってね。だからこそ、デザイナーとして加古川で活躍して、その姿をこれからの世代に見せ続けていきたいなと思っています。

ロペス:それが地方における子どもたちの、今後の選択肢を増やすことになるということですね。一つ疑問なんですけど、だったらフリーランスという形で一人で活動するのではなくて、チームを組んで事務所を立ち上げてやっていこうとは思わなかったんですか?

西嶋:そういう考えもあります。今は本当にクリエイターが少なくて。どうしてもチームを組もうとすると地域外の人しか見つからなかったんです。そうするとどうしても仕事も地域外のものになってしまう。これじゃ加古川に帰ってきた意味が無いんですよ。そりゃ都会の方が仕事は多いし単価も高そうですけどね。自分は加古川でデザインの仕事をすると決めて帰ってきたので、この土地で仕事をして、チームを組んでいきたいなと思っているんです。

ロペス:なるほど。そこまでこだわって「加古川」なんですね。でも加古川でデザインの仕事って、数も少なそうだし大変じゃないですか?

西嶋:いや、めっちゃ大変ですよ(笑)大変ですけどね(笑)最初は加古川でしっかり仕事をしてからかなと。加古川はやっぱりデザインの仕事が少ないので、今大変なことになっていますが、覚悟決めて帰ってきてるんで、あくまで加古川中心でってところですね。

ロペス:あ、やっぱり大変なんですか(笑)

西嶋:ヤバイよ(笑)独立したてはだいぶ調子乗ってたなと思う。初めに加古川中心って仕事を縛って、自分から仕事の幅狭めて何やってるんだと。だからこれからは、徐々に外からも仕事がいただけるようにしていこうとは思っています。また今後、株式会社とかデザイン事務所として大きく発展させていきたいなという想いもあるんです。デザインに興味のある加古川の学生と一緒に、インターンという形なりアルバイトという形なりで仕事したいとも思っているし。今はその準備段階っていう感じですかね。

デザイナーとして、腕を磨く習慣

ロペス:最後に一つ伺いたいんですが、365日アートワークされているじゃないですか?自分毎日チェックしてるんですけど、あれってどういう目的でされているんですか?

西嶋:今僕一人でデザインやっているんですけど、そうするとおのずと表現の幅が狭くなってくるんですよ。会社やプロジェクトチームだと、デザインに関わる人数も多いし、その分アイデアもたくさん出てくる。その中で色んな意見を聞いたり、評価をもらったりして、デザインも磨かれてくるじゃないですか。でも一人だとそうはいかないんですよね。それを防ぐ、あるいは広げていくために取り組んでいるんです。

ロペス:アイデアやデザインのテイストに幅を持たせるために……ということですか?

西嶋:そう。仕事も当然成長の場にはなるんですけど、デザイナーってクライアントさんありきの仕事なので、自分のしたい表現だけするのではなく、一緒に作っていくというのが個人的な考えなんです。だからアートワークという仕事と関係のない部分で、自分のやりたいこと、新しいことに挑戦をしていく。例えば手書きでデザインをしていて、そこに水彩も使えるようになったら、それって表現の幅が広がったって言えるでしょ?そうやって新しい技術を学べたり、表現の幅が広がったりして、仕事においても新しい提案がしていける。そういう意味で取り組んでいますね。

ロペス:なるほど、勉強になりました。ライター業界でもよくブログを書け!みたいな話はあるんですけど、今伺ったように、自身の腕を磨き、表現を広げる意味で言われているのかもしれないですね。自分ももっと記事を書いて、腕を磨いていけるようにします。今回はありがとうございました。

西嶋:がんばってください!ありがとうございました。

​インタビューを終えて

「かっこいい大人の背中って、どういったものだろう?」

今回これから育つ世代に向けて、自身が道を作り、その背中で在り方を見せている西嶋さんに話を伺って、少し答えが見えた気がします。

自分がどういう想いで仕事をしているのか。
その仕事は地元にとって、そこで育っていくこれからの世代にとって、どういったもので在りたいのか。

そういった問いに明確な答えをもって日々仕事に取り組む「背中」に、自分はかっこよさを感じました。

「地元加古川に、デザイナーという選択肢を」

これから育つ若い世代にとって、選択肢のあふれる加古川であってほしい。
自分もその想い、全力で応援していきます。

西嶋さん、アツい想いを聞かせていただき、本当にありがとうございました!

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お仕事(インタビュー・取材など)の相談は
こちらから。

この記事を書いた人

ロペス

1992年、奈良県生まれ。少年の心を忘れない26才児。paletteの編集長兼ライター。通称「ロペス」。畿央大学教育学部を卒業後、東京の人材派遣会社に就職。その後小学校教諭、塾講師、認定子ども園保育補助を経て現職。人、モノ、場所の魅力を引き出し、記事として発信するため日々奮闘中。目下の悩みは「終わらない成長期」。ダイエット方法募集中。