子どもたちに、これまで触れたことのない世界を見せる【県農みらいフェスタ@兵庫県立農業高等学校】

こんにちは。
播磨の魅力を発信するメディア「palette」のライター、ロペスです。

2018年。「平成」という一時代が終わりに近づき、新しい時代の足音が聞こえてくる今。これまで当たり前だった価値観が崩れ、足並みを揃えて全員が同じ方向を向いて進むモデルは限界を迎ています。

人々の価値観は多様化、複雑化し、「幸せ」というゴールも人によって全く違うところに。社会という大きな枠組みの中で見ても、この流れに合わせて徐々に変化してきています。

そして、その流れはここ、加古川の土地にも。既存のルールや常識といった枠にとらわれず、子どもたちに広い、未来への可能性を提示している学校がありました。

兵庫 播磨 加古川 姫路 ローカルメディア palette 兵庫県立農業高校 キャリア教育 県農みらいフェスタ

兵庫県立農業高等学校、通称「県農」の定時制。かこがわ若者会議への参加や、「ユニバルin東加古川」のスタッフ、「鶴林寺 光とアートフェスタ」のスタッフなど。学内に限らず地域で幅広い活動をしている生徒がいることでも知られる高校です。

「かこがわ若者会議」のイベントインタビュー。
鶴林寺 光とアートフェスタ。設営スタッフに県農生がたくさんきていました。

ここが今、すごい。

2018年3月2日。
県農定時制で行われた型破りな進路講演会、「県農みらいフェスタ」。集まった講師である大人たちは、風船屋、フリーのデザイナー、踊る公務員に地元テレビに出演しているタレントなど。これまで学校で出会ったことがないような人たちばかり。

おいおい、マジか。
学校教育現場だぞ。
ここまで「出来る」ものなのか?

この学校、自分の知っている学校と「何か」が違う。

加古川ライター、ロペスのイベントレポート。今回は世の中の「常識」の枠に収まらない、幅広い未来への選択肢、可能性を子どもたちに提示する「県農みらいフェスタ」に突撃取材してきました。

「異質」な講師控室。

学校の門をくぐり、講師控室に案内され、ドアを開けたときから「何か」が違った。もう既に面白い。まず凄い髪型の人がいる。一般的な高校の生徒だったら、絶対校門で頭髪検査引っかかる髪型。黒彩ふられるレベルじゃない。服装と合わせて、間違いなく講師としては呼ばれることのないであろうタイプの人。

兵庫 播磨 加古川 姫路 ローカルメディア palette 兵庫県立農業高校 キャリア教育 県農みらいフェスタ
講師の皆様の集合写真。(提供:県農定時制)

そして部屋を見回してみると、以前インタビューさせていただいた風船屋のろみひ〜さんや、「and」のグラフィックデザイナーの西嶋さんが。

兵庫 播磨 加古川 姫路 ローカルメディア palette 兵庫県立農業高校 キャリア教育 県農みらいフェスタ
バルーンショップe-スマイル代表のろみひ〜さん。
ろみひ〜さんのインタビュー。
兵庫 播磨 加古川 姫路 ローカルメディア palette 兵庫県立農業高校 キャリア教育 県農みらいフェスタ
「and」のグラフィックデザイナー、西嶋さん
西嶋さんのインタビュー。

二人とも魅力的な方たちで個人的に大好きですが、学校のゲストティーチャーとして呼ぼうと思うと管理職のハンコをもらいにくいタイプの大人です。いただいたプリントに目を通すと、他の講師の方々も変わった経歴の方たちばかり。

この控室、完全に「異質」だ。
少なくとも公教育が敷いているレールを走っている人たちじゃない。未開の荒野に自分でレールを敷いていく、そんな開拓者タイプが集まっている。いったい、この人たちは子どもたちの前で「何」を伝えるんだろう。

そんな期待半分、不安半分の気持ちで開始のチャイムを聞き、魅力的で良い意味で「普通」じゃない講師がプレゼンターを務める各教室へ向かいました。

「県農みらいフェスタ」トークイベントの様子

最初に風船屋のろみひ〜さんがプレゼンターを務めていた教室へ。

兵庫 播磨 加古川 姫路 ローカルメディア palette 兵庫県立農業高校 キャリア教育 県農みらいフェスタ

話の内容は、これまでの経歴やどうして風船屋をしているのか?など。事前に各生徒から質問を集めていたようで、それに答える形で話をしていました。

次に向かったのは、加西市の職員でありながらダンスを通して社会問題の解決を目指す団体「Do-it」の代表もされているHIROさんの教室。

兵庫 播磨 加古川 姫路 ローカルメディア palette 兵庫県立農業高校 キャリア教育 県農みらいフェスタ

自身の生い立ちに始まり、これまでの人生で直面した様々な困難や、それをどのように乗り越えてきたのかを生徒に語っていました。

県農定時制の生徒と同じく、自身も定時制高校で学んだ経験を持つ和酒茶屋 Chillのオーナー、橘田将吾さんの教室では、高校時代の経験を踏まえて「自分が好きなこと」を見つける大切さについてお話されていました。

兵庫 播磨 加古川 姫路 ローカルメディア palette 兵庫県立農業高校 キャリア教育 県農みらいフェスタ

「and」のデザイナーである西嶋さんの教室で行われていたのは、担当の先生と対談する形のパネルディスカッション。デザインの話が中心で、デザインはどうやって考えるのか、どうすればデザイナーになれるのかなど、何かをつくりだすことに興味を持っている生徒たち向けの内容でした。

兵庫 播磨 加古川 姫路 ローカルメディア palette 兵庫県立農業高校 キャリア教育 県農みらいフェスタ

その他にも、各教室で自分の足で道を拓いてきた講師たちが、これまでの常識にとらわれない新しい可能性、世界を紹介していました。

​「仕掛人」インタビュー

トークイベントを終え、講師控室に戻って一息。もうコンテンツとしてはおなかいっぱいなのですが、イベントレポートとして外せない内容がまだ一つ残っていました。

それは「仕掛人」の想い
どうしてこのようなイベントが行われたのか。やろうと思って簡単に出来るものではないはず。これは絶対並々ならぬ仕掛人の「想い」がある。

私はこの行事が出来上がった経緯を知るため、今回の「県農みらいフェスタ」の仕掛人で兵庫県立農業高等学校定時制の進路指導部長である古塚先生に、「県農みらいフェスタ」にかけた想いをお聞きしました。

兵庫 播磨 加古川 姫路 ローカルメディア palette 兵庫県立農業高校 キャリア教育 県農みらいフェスタ
兵庫県立農業高等学校定時制の進路指導部長、古塚明日人先生

ロペス:本日は魅力的な行事にお呼びいただき、ありがとうございました。

古塚先生:こちらこそ、お越しいただきありがとうございました。

ロペス:早速ですが、なぜこのような形の行事をされようと思ったのか、教えていただけますか?

古塚先生広い世界を見せてあげたい、という思いからですね。今の子ども達にとって、自分の生活の外にある世界に触れるのは中々難しい。ですから親や先輩、先生といった身の回りの大人だけでなく、今まで彼ら彼女らが出会ったことのないような大人に出会う機会をつくろうとしたんです。そしたらこうなりました。

ロペス:こうなりました(笑)確かに異色だなと思います(笑)講師として参加された方々って、本当に多種多様で、職業も様々ですよね。どういった規準で選ばれたんですか?

古塚先生:夢という捉え方に幅のある人達を集めたと思っています。以前大学生と関わる機会があって、彼らに「夢」について聞いたことがあるんです。「あなたの夢って何なの?」って。そしたら職業ばかり出てくる。そうじゃないだろうと。僕は、職はあくまで夢をかなえる一つの手段だと考えています。なので職という枠組みにとらわれず、生き方や在り方で夢を体現しているような大人を呼ぼうと思いました。規準があるとすれば、そこですね。

ロペス:なるほど、職にとらわれない夢ですか……。わかります。わかるんですけど、なぜそのように考えられるんですか?これは僕の先入観かもしれないんですが、学校の先生って優等生で、正解にこだわる人が多いイメージで……。

古塚先生:多分ね、それは僕が学校嫌いだからなんです。中学はほとんど行ってなくて、一度高校も中退していますし。

ロペス:そうなんですか!?教員としては異色の経歴ですね……。

兵庫 播磨 加古川 姫路 ローカルメディア palette 兵庫県立農業高校 キャリア教育 県農みらいフェスタ

古塚先生:そうでしょうね(笑)当時学校は嫌いだったんですが、歴史や文化の勉強は好きだったので、もっとちゃんと勉強するために大学には行きたいなと思ったんです。それで高校に通い直しました。だから僕20歳まで高校生やっていたんですよ。

ロペス:20歳で高校生!?今まで色んな教育現場見てきましたが、聞いたことが無い……初めてです(笑)入り直した高校での生活はどうでしたか?

古塚先生:入り直した高校があった場所は宮崎県の田舎で、周りに何もなくて、何もできなさそうな場所でした。でもその中で「いかに楽しむか」を考え続けました。ああだから、こうだから出来ないじゃなくて、どうすればいかに楽しめるか。それをひたすら考え続け、実践していました。

ロペス:その気持ち、大事だと思います。「○○だから面白くない」じゃなく、そこでどうすれば面白く出来るのかを考えられる。そうすると制約の中でもやれることって結構ある気がします。

古塚先生:そうですよね。「遊び方を知っている」「遊び心を持っている」というのが大事だなと。面白くないをそのままにしていたら、ずっと面白くないじゃないですか。いかに工夫して面白く遊ぶか、それが大事なんじゃないかって思います。 

ロペス:今回の行事も、学校教育という制度の中で限界がありながら、その中でどれだけやれるかを模索し続けた結果できたものなんですね。

古塚先生:はい。大人がやり方を提示できれば、子どもたちの見本になるので、そうやって伝えていけたらと思います。

ロペス:以前御校の生徒二人のライブをプロデュースしたことがあるんですが(犬とカメレオン)、制約のある中でも工夫しながらできることを探して実践する姿勢に感銘を受けたんです。ああいう子たちが育つ学校ってどのようなところなんだろうと思っていましたが、今日取材してみてわかりました。大人の生き方在り方って、ダイレクトに子どもに伝わる。だからこそ今回の「県農みらいフェスタ」のような行事が必要なんですね。

古塚先生:そうですね。実際に自分の教え子の中で、今回のような行事の講師として登壇した子たちもいます。学んだことを活かして社会に出て、また次の世代に可能性を提示してくれる。「犬とカメレオン」の二人のライブも、高校生の可能性を広げる意味で素晴らしいことだと思うし、そういった流れが生まれていることは嬉しいです。

ロペス:今日は取材できて本当に良かったです。ありがとうございました。

古塚先生:こちらこそ、お越しいただきありがとうございました。

​イベントを終えて

インタビュー中、一つ気になることが。それは古塚先生の言葉選び。

発言の端々で「も」という助詞が使われるんです。

「こういった可能性『も』あっていい」

「そういう大人がいて『も』いい」

この「も」が、優しいんです。温かい。ここで「が」という助詞を使ってしまえば、それ以外の選択肢を否定することになってしまう。

「こういった可能性『が』いい(それ以外の可能性はダメ)」

「そういう大人『が』いい(それ以外の大人はダメ)」

言葉は人をあらわす。そう言われるように、インタビューをしていて随所に出てくる「も」という助詞に、古塚先生の価値観がにじみ出ているんだと思いました。

一つの正解や価値観を押し付けるのではなく、子どもの選択肢を広げるために。

「県農みらいフェスタ」

子どもたちが知らない世界、可能性に出会い、人生を考える一つのきっかけになる行事。こんな行事「も」あっていいと思う。成功も幸せも、これからの時代一つの正解があるわけじゃないから。

撮影協力:SAKASAMA WORKS

Follow me !!

お仕事(インタビュー・取材など)の相談は
こちらから。

この記事を書いた人

ロペス

1992年、奈良県生まれ。少年の心を忘れない26才児。paletteの編集長兼ライター。通称「ロペス」。畿央大学教育学部を卒業後、東京の人材派遣会社に就職。その後小学校教諭、塾講師、認定子ども園保育補助を経て現職。人、モノ、場所の魅力を引き出し、記事として発信するため日々奮闘中。目下の悩みは「終わらない成長期」。ダイエット方法募集中。